脂肪
その64.「脂肪」の間違いは"死亡"に通ず(下) オメガ6(リノール酸)を減らそう!
生理学博士 久間英一郎
皆様ご存知の通り、戦後65年。食の欧米化による生活習慣病等の激増、それに伴う医療費の高騰は約35兆円、国の税収に匹敵する勢いです。
もう一つ、ある調査によると昭和初期と末期を比較すると、卵と肉の消費量の伸びがそれぞれ6倍、11倍であるのに対し、牛乳・乳製品と油脂の伸びは、何と23倍と20倍であること。
この二つの事実をつき合わせてみると"脂肪の間違いが病気を作っている"と言っても過言ではないと思います。
その脂肪の間違いの一つが、前回の「トランス脂肪酸」であり、今回のオメガ6(リノール酸)の摂取過剰の問題です。
なぜ、オメガ6(リノール酸)が健康によくないかを言う前に、脂肪の体内での働きに注目してみましょう。
体内の脂肪の働きで特に重要なのが、脂肪が細胞膜を作る材料となるだけでなく、身体を調節するプロスタグランジン(ホルモン様物質)を作る材料ともなる ことです。この細胞膜やプロスタグランジンが、オメガ6(リノール酸)から作られると、細胞が固くなったり、血液を固まり易くしたり、炎症を起こしたりし て動脈硬化、血栓症、関節炎、アレルギー等のリスクを高めると考えられています。
反対に、オメガ3(αリノレン酸)から細胞膜やプロスタグランジンが作られると、オメガ6の病的作用が抑えられるので、結果として動脈硬化、ガン、アレ ルギー等の病気が抑えられるのです。オメガ6とオメガ3は、それぞれ相反する作用をもっているので、両者のバランスが極めて大切となるのです。
このオメガ6とオメガ3の摂取比率は、旧石器時代は約1対1。これが現在の欧米では、約15対1。日本でもこの50年の間に、国がリノール酸を推奨した こともあり、その比率は、「10対1、あるいは50対1というとんでもない比率になっており、さまざまな現代病を引き起こす大きな原因となっているので す。」(杏林予防医学研究所所長、山田豊文先生)
では、両者の理想的な摂取比率はどれくらいか。概ね、「4対1」以内が適当とされています。その為には、オメガ6(紅花油、コーン油、大豆油等に含まれ るリノール酸)をかなり減らし、オメガ3(亜麻仁油、シソ油、青背の魚油等に含まれるαリノレン酸、DHA、EPA)を多く摂取するように努めなければな りません。
北極圏に住むエスキモーは、アザラシの生肉を主食としていますが、心臓病が非常に少ないのです。それは、アザラシにオメガ3が多く含まれているからなのです。
オメガ3の代表である亜麻仁油は、「魔法の薬」との別名をもつほど健康に有効な油です。ノーベル賞医学博士シュバイッツアをして「天才」と言わしめたゲルソンが、「ゲルソン療法」の中で唯一認めた油が亜麻仁油であることからしても、その「魔法」ぶりがうかがえます。
肉や乳製品等の動物性脂肪については、今までに何度も書きましたので、本稿では割愛しました。同じく割愛したオメガ9(オレイン酸)も含めて表にまとめましたので、ご参考ください。