ピーエスの取り組み - 過ぎたるは及ばざるに劣る

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その62.「川上」の汚染が「川下」に病気をつくる!

生理学博士 久間英一郎

1000年に一度の災害があった今年の締めは、やはり食生活と健康(病気)についての本質を、よりわかりやすい手法で書いてみたいと思います。
 筆者は、すでに1000回近く講演をさせていただいておりますが、最近多用する手法は、「川上・川下の理論」で食と健康(病気)を解説することです。(この手法を教えていただきました富山医科薬科大学名誉教授・田澤賢次博士に感謝いたします。)
 川の上流で工場や工事現場等から汚染物質が排出され続けると、川の下流でその水を利用したり、魚を食べた人たちに病気が発生することは、公害発生のメカニズムとして皆様ご存知の通りです。
 これをヒトの健康(体)に例えるとどうなるか?食物が口から胃や腸へと運ばれ、これが消化吸収されて血液ができるまでを「川上」と考えます。そして、この血液が肺・心臓を経由して末端器官(組織)に運ばれるまでを「川下」と考えてみましょう。
 そこでまず「川上」から見てみましょう。戦後の食生活の変化を見ると、わずか50年足らずのうちに動物性タンパク質は1.7倍に。動物性脂肪は3.5倍 に。そして炭水化物は何と2/3にも達していません。これを端的に言うと、肉・卵・牛乳の摂取の激増と米摂取の激減ということになります。これに加えて、 白砂糖・油脂・加工食品の激増。さらには、ストレス・冷え・運動不足等々。
 これら食生活の変化の全ては、「川上」の中心舞台である腸内細菌の視点で見ると、悪玉菌=腐敗菌の繁殖にまことに好都合な環境なのです。その結果、腸内 は異常発酵し、硫化水素・アンモニア・ヒスタミン・インドール・ニトロソアミン等々の毒素が腸管に溢れる所となります。このようにして「川上」が汚染され るのです。
 この「川上」の汚染が肝臓の解毒能力を超えて「川下」へ流され続けると、体質的に遺伝子的に一番弱い器官(組織)に炎症・病気が発生することになるので す。いわゆるガン・脳卒中・心筋梗塞・糖尿病・動脈硬化・アレルギー等の生活習慣病(「川上」が汚染されて「川下」に病気が発生するような生活習慣をもっ ている人の病気)がそれなのです。そして、この生活習慣病は、今や若い人の間に広まっていることが指摘されているのです。
 「川上」「川下」の理論をさらにご理解いただくために花粉症を例にとって説明します。
 筆者は子どもの頃、九州の田舎に住んでいましたが、杉の花粉の季節になると杉の木の下で花粉を頭からかぶりながら遊んでいたものですが、誰一人として花 粉症になった者はいませんでした。ところが今日、数百キロの彼方から飛んできたわずかな量の花粉に反応して花粉症を引き起こしてしまう...一体何が変わった のか?花粉が変わったのか、人が変わったのか?そう、人が変わったのです。人の「川上」が汚染されることによって免疫力が低下し、「川下」に炎症を引き起 こしたのです。
 今日の医療は、まことに残念ながら、この「川上」をとかく見ようとせず、「川下」の炎症・病気のみを見て治療しようとしています。ガンに手術・放射線・ 抗ガン剤。アレルギーにステロイド等々。これらは全て「川下」しか見ていない治療法ですので、これでは袋小路に入らないはずはありません。原因は、「川 上」の汚染にあるのですから、本質的な解決法=治療法は、「川上」の浄化。つまり食生活の見直しによる腸内浄化にあるのです。これ抜きにあらゆる本質的な 解決法=治療法はないと断言いたします。
 くり返しますが、「川上」の汚染が「川下」に病気をつくるのです。そして、「川上」の浄化の一番端的な方法が日本の伝統食への復帰なのです。
 前回も書きましたが、伝統食に復帰することが、生活習慣病だけでなく放射能対策にもなることを福島の惨禍を通して私たちが学ぶべきことなのです。

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