放射能発酵食品
その60.生命を守る「発酵食品」生活習慣病から放射能・食中毒対策まで
生理学博士 久間英一郎
私は、ホームページに、「国を守るとは人を守ること、人を守るとは食を守ること、食を守るとは土壌を守ること」と書きました。
確かに、土壌が死んでしまうと作物(生命)は育ちません。だから農家の人達は、作物を作る前にまず"土づくり"から始めるのです。土が豊かであるという ことは、微生物(生命)が生きているということです。だからそこから新しい生命(植物=食物)が生まれ、それが動物に摂取されると、動物の腸内微生物(生 命)の力を借りて進化し、また新しい生命(血・細胞)が誕生するのです。
つまり、この自然環境は姿の大小こそあれ、「つながる命」(真弓定夫博士)の舞台なのです。
以上、前置きして今回のテーマの、「発酵食品」ですが、これぞヒトの腸内微生物が最高に喜こぶ食品なのです。なぜなら、発酵食品自体が善玉菌の宝庫なのですから。
では、食材が発酵すると何がよいのでしょうか?納豆を例にとると、原料である大豆は、「畑の肉」と言われる程、良質のタンパク質やビタミン、ミネラル、 脂肪、食物繊維等を含んでいるのですが、これが発酵すると、タンパク質の吸収率が50%アップ、ビタミン・ミネラルも増加(B2は2倍以上)し、酵素もよ り強力になり、消化吸収もよくなります。加えて、血栓を溶かすナットウキナーゼや納豆菌による整腸(便通改善)・浄血作用が上がる等、大豆にはなかった成 分が増えてくるのです。
このように食材が発酵することによって、元々の食材の力がアップしたり、新たな力が加わったりして、まことに体に優しい食品になってくるのです。
これは、納豆に限らず、みそ、醤油、天然酢、梅干、漬物等全ての発酵食品にも言えることです。ですから毎日の食事にこれらの発酵食品を積極的に取り入れて下さい。これが"つながる命"を強化するのです。
昨今、原発事故による放射能やユッケによる食中毒が心配されていますが、これらの対策にも発酵食品が力を発揮します。
「長崎に原爆が落とされた時、みそ蔵にこもって毎日みそを食べていた人が後遺症もなく助かった」(須見洋行博士)という話や、「チェルノブイリ原発事故 で問題となった放射能の生体からの除去に納豆のジコリン酸が効く」、「当時のソ連などにみそが大量に輸出される原因となった」(同上)、「りんごの食物繊 維(ペクチン)がチェルノブイリの子供達の放射能除去に役立った」(田澤賢次博士)等々の報告は、全て腸内微生物が守られたことを示しています。
なぜなら、放射能が体内に入ると、まず小腸の絨毛を傷つけるそうです。以前にも書きましたが、腸の絨毛は、栄養を吸収する場所であるだけでなく「造血」 という生命誕生の舞台でもありますので、これが傷つけられると正常な血液ができ難くなり、貧血や白血病、免疫力の極度の低下(尿毒症・敗血症)をもたら し、生命が危機に瀕する所となるからです。
これは、ちょうどO157やO111による食中毒のメカニズムとよく似ています。この食中毒にも発酵食品は役立つのです。
「つながる命」を放射能や食中毒から上手に守るためにも発酵食品を積極的に摂取する意義がお解りいただけると思います。
お酒好きの方には朗報ですが、日本酒(純米酒)も放射能対策に役立つという報告もなされています。
いづれにせよ、生活習慣病対策にも放射能・食中毒対策にも特別なことはしなくても日本古来の伝統的発酵食品が役に立つことを知っておくことも大切だと思います。
日本の伝統食に感謝!