ピーエスの取り組み - 過ぎたるは及ばざるに劣る

その58.歯周病は身体の赤信号 歯の健康もまた食生活から

生理学博士 久間英一郎

新年おめでとうございます。今年もよろしくお付き合いくださいませ。
 新年第一回目は、「歯」について。年齢の齢は、歯に令と書きます。つまり、歯が命令するもの、歯の健康によって決まるという意味と思われます。それほど歯は天寿を全うするために大変重要なものなのです。
 今日、この大切な歯を脅かしている病気が歯周病です。今や、歯周病は小学生の約半数、36~80歳では約80%が罹っているといわれています。  歯周病とは、歯茎の奥の、歯を支えて固定しているあごの骨「歯槽骨」が溶けていく病気です。初期は歯茎の一番上の「辺縁歯肉」だけが腫れる症状(歯肉炎)が見られますが、進行と共に歯槽骨の吸収が進み(歯周炎)、最後には、歯が抜け落ちてしまう病気なのです。
 この歯周病の原因について、従来はプラーク(歯垢)であるとして、次のように説明されてきました。プラークとは、食べかすに口腔内細菌が増殖して糊状に なったものです。そのプラークの中に増殖した悪玉細菌が主犯となって歯と歯の隙間「歯周ポケット」にたまり、毒素を出し、それが歯肉と歯槽骨に炎症を起こ し、歯周組織を破壊するのですと。
 ですから、歯周病の唯一の予防は、歯みがきによるプラークの除去にあったのです。ところが、しっかり歯みがきしても治らない歯周病が増加してきたのです。
 丸橋全人歯科院長、丸橋賢先生は、「定説に従って治療しても治らないのは定説が変なのだ」と様々に研究を重ねられた結果、「歯周病の原因はプラークだけ ではない。生命力の衰えー常在菌と免疫力のアンバランス、即ち食生活の乱れにある」との結論に達しました。歯もまた身体の一部である以上、食の善し悪しに 左右されるのは当然のことであります。
 "自然流子育て"を提唱しておられる某医師は「私は基本的には歯みがきはしない。必要な場合、唾液で磨くのです。正しい食生活は当然で、食事の最後に堅 い食物(たくあん等)を食べればよい」と。「唾液で磨く」とは素晴らしく含蓄のある言葉ではありませんか。この唾液の質こそが食生活に裏づけされた免疫力 と言えると思います。
 前述の丸橋先生は、「歯周病が少々重症になっても諦めないで、1本でも多く自分の歯を守って欲しい」と訴えます。加えて「もともと骨は溶けたがっている のではなく、生きたがっているのです。その望みに沿った条件づくりを行ない、生命力ある状態に導けば、骨は回復していくのです。」として「抜くしかない」 と宣告された多くの方々を救っておられます。
 先生の言われる「骨の望みに沿った条件」こそ、筆者が長年書き続けております美容と健康のための食生活なのです。即ち、玄米(3分づき米)・雑穀を主食 に野菜・根菜・海藻・小魚・味噌・納豆等の発酵食品などビタミン・ミネラル・食物繊維たっぷり食品。(歯茎の60%を占めるコラーゲンも大切)
 逆に歯によくない食物は、肉・卵・牛乳(乳製品)の過食。白砂糖・加工食品等の高脂肪・高タンパク・低ビタミン・低ミネラル食等。またファストフードや軟らかい食品の激増も歯周病の原因となっています。
 歯周病で困ることは、単に歯を失うだけにとどまらず、全身病と繋がっていることです。歯を失うと消化器等の機能低下を始めとし、脳の働きの低下による記 憶力低下、認知症、咬み合わせの狂いからくる肩こり、眼精疲労、頭痛、さらには骨粗鬆症も進行します。骨密度が低い方ほど歯周病に罹りやすいといわれてい ます。さらには、心臓や腎臓等の細菌感染も心配です。便秘や冷え性、不眠、動脈硬化、糖尿病、貧血等々まさしく全身病に繋がるのです。
 食は身体をつくり、精神(心)をつくり、歯もまた身体のうち、食がつくるのです。
 食を正し、齢(よわい)をヨワイものにされませんようにお願い致します。

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