ピーエスの取り組み - 過ぎたるは及ばざるに劣る

その他(食)

その37. 四季養生法「秋」 - 実りの秋に感謝、呼吸器官に感謝 -

生理学博士 久間英一郎

秋の養生法について貝原益軒は、「養生訓」の中で次の様に言っています。「七、八月(旧暦)は、秋といえども残暑がまだ厳しく、夏の間開いていた肌 のキメはまだ閉じておらず、・・・・にもかかわらず、すでに秋風が吹くようになってきている。このため"風邪"に傷められやすいので、涼しい風に当たり過 ぎてはならない」。そして、肺に繋がる呼吸器系疾患に注意せよと指摘しています。さらに「黄帝内経」(四季調神大論篇)は、「秋三カ月は、万物が成熟し、 収穫の季節である。・・・・当然、早寝早起きすべき・・・・心を安らかにして・・・・心を外に働かせないで、肺気を清浄に・・・・」と言っています。心と いう字が二度出てきます。これを筆者流に解釈すれば、秋はまず(収穫に)感謝しよう。感謝の心をもって健康を保ちましょう、との教えであるように思われま す。

秋はまた「憂い」の季節でもあります。中国伝統医学では、「憂は肺を傷る」とされています。一方で"笑一笑、十年少、愁一愁、白了頭"(笑って暮ら せば十年若返り、愁えて暮らせば白髪になる)という諺も中国にはあります。後に書く呼吸法等を上手に利用して程よく"息抜き"して、心の健康も保ってもら いたいものです。

この時期の食養生としては、来るべき冬に備えて、イモ・栗・米・麦・カボチャ等良質のデンプン質、脂質を摂ることです。加えてお勧めは、良質の脂質 を含むナッツ類(ピーナッツ、クルミ他)は、コレステロールの改善、ボケ防止等に役立ちます。また、大根、ネギ、辛子等の辛味を少々バランスよく摂ること も意味のあることです。

秋の運動養生としては、腸管、脳内に気を導入する元気回復呼吸法を紹介します。呼吸は肺の仕事と思われていますが、実は、「腸管こそが呼吸の本家で あり、肺は腸管の枝分かれで、いわば分家なのだ」ということが明らかにされてきています。なるほど、オナラやゲップが出ることがそれを物語っています。な らば、本家たる腸管呼吸を健康増進に活用しない手はありません。腸管呼吸の基本は、口いっぱいの唾液と空気を一緒に胃へ飲み下し、さらに腸へ、そして肛門 から邪気を出すことです。これで腸の働きが上がってきます。

また、面白いのがこの応用編、あくびやため息を積極的に誘発することも体内の邪気を排出するので大いに意味があります。ため息を誘発する呼吸法の秘 訣は「二度短く強く息を吸い込んで吐く時には、"アーア"とお腹の中から深くて長い息を吐き出すようにすること」です。この時、全身をリラックスさせるこ とが大切です。

次に脳の酸欠状態を解消する"鼻脳直通呼吸法"を紹介します。鼻粘膜は、脳と直結して(特に蝶形骨洞が間脳と直結して)いるので、鼻粘膜の毛細血管から酸素が吸収されて脳に達し、全身の自律神経やホルモンの働きが刺激されます。

"鼻脳直通呼吸法"は、①鼻根の一番奥、即ち副鼻腔に意識を集中させて、鼻根の粘膜から、酸素を始めとする"気"を吸収して、脳に直接に取り込むよ うにする。②二回強く短く吸って一回吐くという呼吸法をリズミカルに続けていく、というものです。いずれも少し難しいかもしれませんが、興味ある方はお試 しください。

参考文献 飯野節夫編著「実用養生学講座」〈10講〉(国際文化交流出版社)

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