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その86.『喫煙は恐ろしい』 その②子ども編 子どもが欲しけりゃ禁煙せよ! 喫煙は児童虐待だ!
生理学博士 久間英一郎
先般、筆者が担当しているラジオ番組で、リスナーから「妊娠したのに主人がタバコを止めてくれない。どうしたらよいか?」との質問に「別居しなさい」と答えてしまったのです。 「少し言い過ぎたかな?」と思いましたが、調べれば調べるほどむしろ極めて正当であることが見えてきました。
そこで今回は、子どもに対する喫煙の害について書きます。
まず日本の子ども達はどれ位タバコの害にさらされているかについて、「日本禁煙学会雑誌」によると2007年には、「父親の48%と母親の11%が喫煙者ですから、日本の1800万人のこどもの半分以上=900万人以上は、出生前あるいは出生後タバコの害にさらされています。わが国の公共施設、交通機関、飲食店、娯楽施設の受動喫煙対策の不十分さをみると、日本のこどものほとんどが受動喫煙にさらされているとみてよいでしょう」と指摘しています。では、受動喫煙でどのような病気が子どもに起きるか?その前に、日本の子ども達はどのような病気で医療機関を受診しているかについて、平成14年患者調査報告によると、0歳児は多い方から順に急性咽頭炎・扁桃炎、予防接種、急性気管支炎、急性上気道感染症、健診と続き、1~14才児の場合は、気管支喘息、虫歯、急性咽頭炎・急性扁桃炎、急性気管支炎、急性上気道感染症となります。これはほとんどが「受動喫煙病」(日本禁煙学会理事・松崎道幸氏)なのです。そして、「親がタバコを吸う家庭の子どもは、これからの病気におよそ1.5~2倍かかりやすくなる」とのことです。 今年、アメリカで発表された6000組以上の母子を対象とする大規模調査によると、妊婦の喫煙は発育中の胎児のDNAに化学的な変化を生じさせ、子どもを危機にさらす恐れがあると報告しています。肺や神経系の発達、喫煙に関連するがん、口唇裂や口蓋裂などの出生異常に関連する遺伝子で変化が認められたと言う。
日本の研究でも喫煙を続けた母親の赤ちゃんは、そうでない赤ちゃんと比べて出生時の体重が100g以上少ないことが報告されています。「出生体重が少ないと将来的に肥満や心臓病のリスクが高まる。妊娠に気づいたら早く禁煙するほど子どもへの影響が少なくなる」と指摘しています。
また、妊娠中および出産後の受動喫煙は、赤ちゃんが突然死する「乳幼児突然死症候群(SIDS)のリスクを2~3倍高める」と言われています。「胎盤を通過したタバコの有害成分(ニコチン、一酸化炭素など)は発達を始めたばかりの(胎児の)脳にさまざまに変調をもたらす」からです。
さらに、通常、肥満は過食や運動不足が原因とされていますが、近年の調査によると妊娠中の受動喫煙や母親の喫煙が、子どもの肥満やあるいは大人になった時の糖尿病・高血圧を数倍増やすという報告もドイツ、日本、イギリスなどで報告されています。
つまりは、「大人の病気は胎児期の受動喫煙で作られる」可能性が非常に大きいのです。
その他、「キレやすい」「よくトラブルを起こす」などの子ども達やADHD(注意欠陥多動性障害)も妊娠中の喫煙と非常に関係が深いと言います。さらに、受動喫煙は、子どもの知能(IQ)低下を招くことも知られています。受動喫煙が強度になると慢性鉛中毒と同じ程度の知能低下を招くという。まさに重大なことです。
このようにタバコの害は、発育途上の胎児のDNAを傷つけ、肺や神経系、脳機能、さらには代謝系にまで重大な影響を与え、大人になってからの病気にまで悪影響を及ぼすのです。
まさしく喫煙は「児童虐待」(松崎氏)なのです。
このように深刻なタバコの害ですが、これを監督するわが国の省庁は厚生労働省ではなく財務省です。国民の健康より収入源としか認識しないタバコ行政の遅れを厳しく糾弾したい。