伝統食
その108.コロナ禍を伝統食(和食)復権のテコとせよ!④ 食物繊維と腸内細菌のコラボによる短鎖脂肪酸でコロナに負けない!
生理学博士 久間英一郎
読者の皆様、新年明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願い申し上げます。
さて、前回、前々回と私達の主食である米、小麦とコロナとの関係について書きました。今回は、野菜(食物繊維)が腸内細菌によって分解・発酵された時に生まれる短鎖脂肪酸(酢酸・酪酸・プロピオン酸)がコロナを始めとする感染症や生活習慣病の予防に非常に有効ですのでご紹介します。
まず、肥満や糖尿病といった基礎疾患をもっている人は、コロナ感染あるいは重症化のリスクが高いと言われていますが、この短鎖脂肪酸が存在すると、脂肪細胞のセンサーがこれを感知して脂肪の取り込みを止めるのだそうです。さらに交感神経を刺激して代謝を促進させると脂肪が消費されますので肥満防止に役立つのだそうです。短鎖脂肪酸が"天然のやせ薬"と言われる所以です。
また、短鎖脂肪酸は、腸の細胞を刺激してインクレチン(糖尿病の治療薬)を分泌させ、これが膵臓に働きかけ、インスリンを分泌させるので血糖が下がるという訳です。ダイエット法として食べる量の制限とか、運動とかが注目されますが、食物繊維と腸内フローラによる短鎖脂肪酸にも注目して欲しいものです。
次に、免疫とアレルギーにも短鎖脂肪酸は関係しています。アレルギーは腸内フローラの乱れに起因して免疫細胞が暴走することによって発生するのですが、短鎖脂肪酸(酪酸)が存在すると、免疫細胞の暴走を制御する制御性T細胞(Tレグ)が他の免疫細胞の"なだめ役"として生まれてきます。このようにしてアレルギーや自己免疫疾患が治まる方向に働くのです。コロナにおいてもこのTレグの存在は重要で、免疫の暴走を抑えるという点でよくメディアでも目にするサイトカインストーム(コロナ重症化)のリスクが低下すると考えられます。
また、短鎖脂肪酸は、腸のバリア機能とも関係があります。腸内フローラのバランスが乱れると腸のバリア機能が低下し、腸の中の様々なものが血液中に入ってくるようになります。こうした状態を"漏れる腸"と呼びます。この"漏れる腸"が重大な慢性病(糖尿病や癌等)を引き起こす原因になると言われています。
例えば糖尿病の場合、腸のバリア機能が弱くなって"漏れる腸"になると、血中に腸内細菌が入ったり、腸内細菌の毒素が入ったりし易くなり、全身的な炎症が進むことになって、肥大化した脂肪細胞と共に糖尿病の引き金になるのだそうです。
その他、動脈硬化や癌も"漏れる腸"から始まり、全身的炎症、それに対する炎症性サイトカインの流れから発生するとも言われています。
ではどうすればよいか?そこで腸のバリア機能向上のために登場するのが短鎖脂肪酸(酢酸)です。実は私達の腸壁の細胞は、腸内細菌が出す「短鎖脂肪酸」をエネルギー源としているという。ですから腸内フローラが乱れて短鎖脂肪酸の生産量が減ると腸のバリア機能が低下するのです。だから短鎖脂肪酸を増やす野菜(食物繊維)と、それを分解発酵する腸内細菌が必要になってくるのです。 読者の皆様は、野菜(食物繊維)というと青い葉野菜を連想される方が多いかも知れません。豆、芋、海藻、山菜も、りっぱな食物繊維ですし、何よりも主食の米を玄米にしただけで効率が上がるのです。日本の伝統食の素晴らしさは、敢えて食物繊維を○○で補給しようと言わなくても全ての料理に食物繊維が揃っているのです。
日本の伝統食(和食)を毎日食べていただくと、腸内細菌が喜んで短鎖脂肪酸を作ってくれるでしょう。 日本の伝統食に戻ってコロナに打ち勝ちましょう。