選食
その103.本当の育児はその子が生まれる 20~30年前から始まる
生理学博士 久間英一郎
読者の皆様、新年明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い申し上げます。
新年第一回目は、育児について。育児というと、ある人は出産後のことと思われるかも知れません。また、ある人は妊娠してからと思われるかも知れません。
私の最も尊敬する一人、小児科医の真弓定夫先生に言わせますと、「本当の育児とは、その子が生まれる20年、30年前から始まります。親自身が、子どもの頃から日本人として正しい暮らしと食事を続け、そのうえで親になれば、お子さんが今のようにアトピーやぜんそく、花粉症などの症状で苦しむことはありません。つまり、祖父母の育て方が孫に影響を与えるということです」 本当の育児をするには親子孫の三代に渡る作業になる訳です。 「それが難しかった場合は、妊娠中の食生活に気をつけること。なぜなら、子どもがお腹にいる十月十日は、生まれてからの80年よりずっと大事な時間だからです(中略)妊娠中は、一個の受精卵が30億倍になり、その形も目まぐるしく変化します。その大切な時期に、いかにかつての日本人が行っていた生活をするか。そうでなければ、妊娠中の誤った食習慣のツケはお子さんが払うことになると思った方がいい」と指摘します。
では、かつての日本人が行っていた食生活とはどういうものか?それは子ども達の為の特別な食物ではなく、筆者も講演会で「選食の視点」として説明している内容そのものです。
①"一物全体食"一つのものはその全体を食べる。米なら玄米、魚なら頭からしっぽまで。
②"身土不二"身体と土壌(環境)は繋がっているという観点から、地元でとれたものを食べる、季節のものを選ぶ、輸入食品は避ける。
③牛乳、乳製品、肉類は極力避けて穀菜食を中心とする。
④自宅で調理すること。素材や調味料を自分で選べる。外食や出来合い食は何が入っているか不明。 等々をおすすめしています。
もう一つ真弓先生が指摘するのは、「ほとんどの子どもは、実は大人以上に自然治癒力が高い」ということです。ですから「気になる症状が出ていたとしても、機嫌がよく、元気があって、よく眠り、よく食べ、便が出ていれば心配することはありません」 「反対に、薬の力を借りた対処療法だけでは、同じ病気の再診率がかえって高くなります。薬(クスリ)は(中略)患者さんにとって『リスク』になりかねない」と警告します。
生活面で真弓先生が強調されるのは、「空気を加工しない」ということです。私達は、横着になり過ぎて、少し熱いだけで、また少し寒いだけですぐエアコンの世話になります。まるで、それが文明人であるかのように。
でも、それが人の身体本来の機能を失わせていくことに気づかなければなりません。外気と室内の温度差が5℃以上あってはいけないのです。
その他、住宅も、できれば木造で風通しをよくし、有害化学物質を含む建材を避けるようすすめています。
マンションの場合は、なかなかそうはいきませんが、せめて換気をよくし、フローリングや家具などに無垢の木を多く使っていただくのがおすすめです。勿論、壁紙にも気をつけていただきたいものです。
それから、先生は、シャンプー、リンスなどに含まれる経皮毒、これから益々多くなることが予想される電磁波にも強く警鐘を鳴らしています。
「薬も注射も一切なし。食事と空気を昔に戻せば子どもはみんな元気になる」「医者の使命は、患者さんを減らすこと」何と素晴らしい先生の哲学でしょうか。
「立つ鳥後を濁さず」との言葉があります。立つ鳥とは親のこと、後とは子どものこととすれば、この諺は「子どもをしっかり育てよ」と言っているように思えます。