その他(食)
その101.もっともっと米を食べよう 米は健康にも地球環境にも役立ちます。
生理学博士 久間英一郎
前回は小麦の危険性について書きましたが、今回は米について書きます。
古来、日本人の食生活は、「一日ニ玄米四合ト味噌ト少シノ野菜ヲ食ベ」(宮澤賢治)が日常茶飯でした。ところが、戦後の食生活はガラリと一変したことは皆様ご存知の通りです。
例えば、昭和30年頃の食生活を基準にすると現代では、牛乳・乳製品は25倍、肉は15倍、反対に米は半分に減っているのです。このように米離れがどんどん加速している上に最近では、「糖質制限ダイエット」とかが話題となり国民をミスリードする状況に陥っています。
だからこそ、結論から言って「日本人はもっともっと米を食べよう」と筆者は主張したいのです。
幕末の医師、石塚左玄を持ち出すまでもなく、「日本人は紛れもなく穀菜食動物」なのです。なぜなら、日本人の歯の構造、腸の長さ、それに消化酵素を見ればそれは明らかです。
例えば、歯は32本中20本が穀物をすりつぶすのに適した臼歯です。(因みにトラやヒョウ等の肉食動物の歯には臼歯はなく肉を引きちぎるのに便利な犬歯だけ)さらには、日本人の腸の長さは、欧米人に比べて1m近く長く(時間をかけてゆっくり消化するのに好都合)、また欧米人は、牛乳を分解するラクターゼが離乳期を過ぎても分泌されるのに対し、日本人は分泌されなくなるので牛乳は不都合なのです。その代わり、米の糖分を分解するアミラーゼの活性が実に高く米食に適しているという訳です。
つまり、それぞれの動物に備わっているものを見ると、その動物の「食性」(どういう食物を食べるべきか)がわかるのです。そう考えると、「日本人は紛れもなく穀菜食動物である」ことがご理解いただけるでしょう。
欧米人が肉を食べているのは自然環境のなせる業です。ヨーロッパの中心であるパリ、ロンドン、ベルリンは、北緯50度前後に位置します。日本近辺で言うと樺太中部に当たります。つまりは寒くて雨も少ないのです。草木も育ち難いので、牛や羊を飼うしかなく、その肉を食べ、ミルク、バター、チーズをつくり、小麦でパンを。パンは水分が少ないので喉の通りが悪いのでバターをつけたり、ミルクで流し込んだりという食文化を成立させたのです。
対して日本は温暖多雨、四方海。米も麦も野菜も海の幸もと極めてリッチなのです。厳しい自然環境の中で仕方なしにでき上った欧米の食文化を、環境的にリッチな日本人が羨ましく取り入れる必然性はないのです。
もう一つ欧米食に対する日本の伝統食の利点は、油の質にあります。肉・牛乳・バターの油は飽和脂肪酸が多いのに対し、米・豆・野菜の油は不飽和脂肪酸が多く健康的なのです。
「米を食うと頭が悪くなる」と某有名大学医学部教授が言ったのは60年前です。冗談ではありません。「気」はもともと「氣」と書いたように米は私達のエネルギー源でした。そして「頭」という字には豆がついています。頭にエネルギーを送るものこそ米と豆が代表する日本の伝統食なのです。
近年の研究によると、糖尿病や肥満対策には、これまでの「炭水化物を控える」ことよりむしろ積極的に食べた方がインスリンの効き目が上がって効果的という説が有力となってきています。
つまりは、その民族の食性から(祖先が食べていたものから)遠ざかるほど病気になりやすいのです。
最後に、米は地球環境問題とも大いに繋がっています。小麦に水田とは言いません。水田は米のものです。熱い夏、水田に水が貯まっているのとコンクリートビルになっているのではどちらが...これは言うまでもありません。地表に水が貯まっていることは地下水の安定にも繋がります。
少食・断食で有名な甲田光雄先生の言葉を借りますと、「牛が吐き出す...メタンガスの大気温、温室効果は、炭酸ガスの56倍と言われている」そうですから、牛肉を食べるのを半分にし、米をしっかり食べれば健康にも地球環境にも大いに役立つのです。
私たちは未来の子供たちにいい地球を残す責務があると思います。